離れて暮らす親の安否確認が出来る高齢者向けの見守りサービスとは?

体験談

孤独死」という言葉をテレビや雑誌でよく見聞きするようになりました。離れて暮らす親がいる40~50代の人間にとっては、他人事ではない問題です。

とくにコロナ禍になってから、今まで密だったご近所付き合いが希薄になり、一人暮らしの高齢者を見守る目が少なくなっているようです。感染リスクを恐れて自宅で過ごす時間が多くなれば、ご近所の方と挨拶を交わす機会も減ってしまいます。ご近所付き合いや町内会の見守りがあるからといって、安心できる訳ではありません。

今回は「元気だと思っていた一人暮らしの親の異変を感じて不安になった」という、由美子さんのお話をご紹介します。

帰省してびっくり!娘が知らなかった一人暮らしの父親の様子

由美子さんは福岡出身ですが、就職を機に上京。夫と職場結婚をし、千葉にマイホームを建て、夫と子ども2人と暮らしています。由美子さんの母親は、15年前に他界。今は父親が福岡の実家で一人暮らしをしています。

そんな由美子さんの体験談がこちらです。

由美子さんと離れて暮らす父親との関係は良好で、週に1回は電話をしていたそうです。由美子さんは子どもの大学受験や新型コロナがあり、ここ数年は帰省できませんでした。

しかし、毎回電話で「元気?変わったことない?」と、聞くと「元気だ。心配ない」という答えが返ってくるので、父親は元気でやっているのだろうと思っていたそうです。

75歳になる由美子さんの父親は、町内会の役員をやっていたり、近くの小学校のボランティアに出かけたりと、比較的社交的で一人暮らしもそれなりに楽しんでいる様子でした。そういったこともあり、由美子さんはなかなか帰省できないながらも、「うちの親なら大丈夫だろう」と、思っていました。

しかし、久しぶりにお盆に帰省したとき、父親の歩き方がぎこちないことに気づきました。

父親に聞いてみると、「3ヶ月くらい前に敷居につまずいて、足首を捻挫した」「病院に通って、湿布をもらっている」とのこと。

「なんで話してくれなかったの?」と、由美子さんは言いましたが、「大したことじゃなかけんが」と、父親はバツが悪そうにそっぽを向くだけ。

そこで、由美子さんは気づきます。父親とは頻繁に連絡を取っていたから安心していたけれど、親はいつまでも強い親のままで子どもに心配させまいと、何かあっても簡単には頼ってくれないのだと。

由美子さんにはほかにも、久しぶりに父親と一緒に過ごして気になったことがありました。

2年半ぶりの帰省でしたが、父親が想像よりも弱々しくなった気がしたそうです。

ゆっくりと2人で話をしてみると、今までは町内会やボランティアで定期的に出かけていたけれど、新型コロナウイルスの流行で集まりはほとんどなくなり、自宅で過ごすことが増えたそう。今では外出は、買い物のために近くのスーパーに行くだけとのこと。足を捻挫してからは買い物も億劫になっているようです。

また、お盆の最中で連日真夏日だったにも関わらず、父親がほとんど冷房を使わないことも気になりました。由美子さんは「冷房入れないと熱中症になるよ」と、何度も言いましたが、父親は「窓を開ければ風が通るけん」や「省エネたい」と、頑なにエアコンのスイッチを入れません。

「私が近くに住んでいたらよいけれど、お父さんがケガや熱中症で倒れても誰も気づかないのでは?」と、由美子さんは心配になったそうです。父親自身は「大丈夫だ」と言っていたそうですが、「父親は強がっているだけなのかもしれない」と、由美子さんは気にしていました。

由美子さんの話を聞いて、一人暮らしの高齢者の不安について調べてみました。

一人暮らしの高齢者の50.8%が孤独死を身近に感じている

親の「大丈夫」という言葉を聞くと、離れて暮らす子どもは安心してしまうもの。

しかし、内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、60歳以上で一人暮らしの方の50.8%が「孤独死を身近な問題だと感じている」と答えています。(※1)

半数以上の方が、「自分も孤独死をするかもしれない」という不安を感じているということです。

ニュースや実生活でも孤独死の問題を見聞きすることが増えています。実際に孤独死をする高齢者は年々増えていて、2020年に東京23区内で孤独死をしたと見られた方は4,238人います。2010年は2,913人だったため、この10年で約1.5倍に増加しているのです。

親は子どもに迷惑をかけたくなくて、弱音を吐きづらいのだろうと思います。しかし、子ども側は親の不安を察してあげたいですね。

また、一人暮らしの場合、自宅内で倒れたときに誰かに気づいてもらったり助けてもらったりしづらいという事実もあります。働いていたり友人やご近所付き合いが盛んだったりする場合には、すぐに職場の方や友人・知人が気にしてくれるかもしれません。しかし、もともと自宅にこもりがちな方の場合には、亡くなっても周囲に気づかれることがないまま時間が経ってしまいます。

一人暮らしの方が孤独死した状態で発見されたとき、亡くなってから発見までの平均日数は17日というデータがあります。(※2)

17日というと、ご遺体の腐敗が進むため一般的な形でのお別れが難しい状態となってしまいます。残された家族にとって、大事な人の最期がそういった形になることはとても辛いことです。

高齢者の場合は家族がまめに連絡を取っていたり、介護サービスを利用していたりするため、一人暮らしの方でも平均4.36日で発見されています。(※3)

由美子さんのように遠方からでも頻繁に連絡を取っているなら、連絡が取れない状態で何日も経過することはないかもしれません。それでも、発見されるまでの日数が4日以上というのは長い気がします。なるべく早く異変を察知して、助けたいですよね。

自宅で転倒して救急搬送される高齢者は多い

由美子さんの父親は居間の小さな段差につまずいて捻挫をしてしまいましたが、同じように自宅内で転倒して救急搬送される高齢者が多くなっています。

東京消防庁の救急搬送データでは、2019年に事故によって救急搬送された高齢者の8割以上が「転ぶ」ことが原因のケガでした。

つまり、事故で搬送された高齢者の10人に8人は転倒が原因だったのです。

しかも、転倒した場所は、寝室や玄関など自宅の中が5割を占めています。また、転倒によって搬送された高齢者の約4割は、入院が必要なケガを負っています。(※1)

由美子さんの父親は、軽傷だったので自力で病院に行って診察を受けましたが、実際には自宅内で救急車を呼ぶほどのケガをすることもあります。「もし転んでどこかの骨が折れていたら」「もし転んだ拍子に頭を打っていたら」と、考えると、ちょっと転んだだけで済むものではありません。

毎日元気なのかを確認し、何かあったときはすぐに連絡をもらえるような、見守り体制を作る必要があるでしょう。

一人暮らしの親に利用させたい「見守りサービス」

遠くで一人暮らしをしている親が心配な方のために、さまざまな見守りサービスがあります。サービス内容は業者によって異なりますが、毎日親の様子を確認し、問題があれば家族に連絡が届くというものが多い傾向です。

具体的にいくつかのサービスをご紹介します。

自治体の見守りサービス

一部の自治体では、独自に見守りサービスを行っています。サービスの内容は自治体によって異なりますが、緊急時に連絡すると、ご近所に住む見守りボランティアが駆けつけるというものが一般的です。しかし、介護認定や緊急度が高い方が優先で、なかなか利用できないという面もあります。

警備会社の見守りサービス

警備会社各社では、高齢者向けの見守りサービスを行っています。

たとえば、「アルソック」では、センサー付きの専用コントローラーを自宅に設置。コントローラーには「緊急」と書かれたボタンがあり、何かあったときはこのボタンを押すだけでアルソックの警備員がすぐに自宅へ駆けつけます。センサーで自宅にいるかどうかを確認したり、その結果をメールなどで離れて暮らす家族に知らせるオプションも利用可能です。

何かあったときに警備員が駆けつけてくれるので安心ですが、月額のサービス料以外にもコントローラーの購入や設置工事にお金がかかります。

宅食

宅食とはお弁当を自宅まで届けるサービスです。高齢者施設やスーパーなど、さまざまなところがサービスを行っています。

たとえば、「ワタミの宅食」では、同じ地域に住むスタッフが毎日決まった時間にお弁当を届けます。手渡しが基本なので、毎日スタッフと挨拶を交わしたり様子を見てもらったりしたい方におすすめです。高齢者の一人暮らしで毎日の食事作りが面倒という方には、とくに便利なサービスといえます。

対応可能な地域が限られているため、まずは宅食を使えるかどうかを確認しましょう。

センサー付きの家電

よく使う家電にセンサーが付いていて、親が問題なく生活しているかどうかを確認できるサービスもあります。

たとえば、「象印のみまもりほっとライン」では、無線通信機能を内蔵した電気ポットを使うことで、親の安否を確認できるというもの。毎日のお茶を飲んだ回数などを離れた家族に知らせてくれます。普段使うものでさりげなく安否確認できるので、人気のサービスとなっています。

毎日温かいお茶を飲む習慣のある方にはおすすめです。

見守りサービスは利用者の考え方も尊重して選ぼう

このように、見守りサービスには、人が訪問するものやセンサーを設置するものなど、さまざまなタイプがあります。サービス内容やかかる費用をしっかり確認して選びましょう。

また、子どもが親のことを心配して見守りサービスを利用したいと思っていても、親は気乗りしないということもあります。「監視されているようで嫌だ」とか「大袈裟にする必要はない」という親の考えも尊重したいですね。

センサーやカメラで監視される感じが嫌だったり、人が訪問するのが煩わしかったりする方には、毎日決まった時間に電話を掛けて安否の確認をするサービスもあります。

いずれも利用者本人の負担にならないサービスを選ぶのがポイントです。

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