実家が物で溢れていると転倒事故の原因に…高齢の親を説得して整理するコツ

体験談

お正月やお盆に帰省したときに、久しぶりに訪れた実家がモノであふれていて、驚いたという経験はありませんか?

片付けてほしいと親に言っても「今度やるから」とはぐらかされて、次に行ったときも同じ状態だと、子どもとしてはがっかりしてしまいますよね。しかし、家の中が片付いていないと、床に置いてあるモノにつまずいて、思わぬケガをすることもあります。

実際に東京消防庁が発表した報告書によると、2021年に東京消防庁管内において「日常生活における事故」で緊急搬送された方のうち、58.7%の方が転倒が原因でした。しかも、転倒により緊急搬送された方の62.5%が、自宅で転んでいるという結果になっています。(※1)

とくに高齢者は、ほかの年代に比べると、転ぶ事故によって重篤な状態になったり死亡したりするケースが多いのが特徴です。

高齢者は転ぶことで、受け身を取れずに頭を打ったり骨折したりすることがあります。長期の入院が必要になると、筋力が落ちて寝たきり状態になる可能性もあるのです。

高齢になると、足を上げずすり足気味に歩きがちです。この歩き方だと、敷居などのちょっとした段差でも、つまずいたり踏み外したりしてしまいます。自宅内の段差はなるべくなくし、廊下や床に滑りやすいものや歩行の邪魔になるものを置かないことが、転倒予防に大切です。

家の中が片付いていないと、転倒の原因になるだけでなく、探し物が見つからなかったり掃除がしにくかったりと、生活しにくいというデメリットもあります。地震や火災などの災害が起きたときに、思わぬケガをしたり逃げ遅れたりするリスクも考えられます。

実家に帰るたびに嫌になるんですよ。親に片付けてと言っているのに、まったく聞いてくれなくて。毎回ケンカになってしまって、自分でも言い過ぎたかなと反省はするんですけど…

このように話してくれた美沙子さん(仮名)は、団塊世代の親が住む実家の片付けに悩んでいるそうで、美沙子さんに話を詳しく聞いてみました。

買い物好きな父と物を捨てられない母。どんどん増える実家のモノたち…

美沙子さんの両親はお二人とも70代後半。築40年を超える実家で、現在はお二人で暮らしています。

美沙子さん
「親はいわゆる団塊世代で。10年以上前に父が退職してからは、悠々自適に年金暮らしをしています。コロナ禍になる前は、二人で海外旅行なんかも行ったりして。父は公務員で退職金もそれなりに出たので、結構余裕のある生活をしているんだと思います」

余裕のある老後は、誰しも憧れるものです。しかし、「お金に余裕があるのも困りもの」だと美沙子さんは言います。

美沙子さん
「父は数年前にスマートフォンを使えるようになったんですよ。孫とテレビ通話したいからって、一生懸命勉強したみたいで。でも、そのせいで、ここ数年は通販でいろいろ買っているみたいで、実家は行くたびにいろんな物が増えているんです」

美沙子さんはため息混じりに続けました。

美沙子さん
「母は母で、古い物を捨てられないタイプで。もったいないって言って、いただき物のお菓子の箱やら百貨店の袋やらも、大事に保管しているんですよね。まあ、それが時々役に立つこともあって『ほら、お母さんが取っておいた袋が役に立ったわ』なんて言われると、私もカチンときてしまって」

美沙子さんは、父親の買い物好きと母親の捨てられない性格のせいで、実家にモノがあふれていると嘆きます。

美沙子さん
「高齢者の二人暮らしなのに、実家はごちゃごちゃと物が沢山あって、落ち着かない空間なんです。物置にも、古い家電なんかがいっぱいあるし。この間は『もうこんなゴミみたいなの買わないで!使わない物は捨ててよ!』と、強く言ったら『私たちが死んだら全部捨てていいから、放っておいて!』と、母に言い返されちゃいました」

実は美沙子さん自身は、あまり物を持たない主義のミニマリストだそうです。ご自身が快適な生活を送っているので、両親にも同じようになってほしいという気持ちもあるのだとか。

美沙子さん
「実際に私が実家を片付けようとすると、親は怒ってしまうし、本当にいつもケンカになるんです。私も全部を捨てようとは思っていなくて、親が暮らしやすいようにしたいだけなんですが」

美沙子さんのように、実家の片付けで悩んでいる子ども世代は多くいらっしゃいます。そこで、美沙子さんと一緒に、親とケンカせずに実家を片付けるための作戦を考えることにしました。

親とケンカせず実家の片付けを進めるための心構えや必要な準備とは?

実家を片付けたいと思うあまり、親に「ちゃんと片付けて」や「全部捨てて」と言ってしまう方は多いかもしれませんが、あくまでも実家は親の持ち物です。親の思いを大切にして、実際に住む人が暮らしやすい家にしていく必要があります。

物で溢れている実家に住んでいる親だって、別に好んで散らかった家に住んでいるわけではありません。気力が湧かなかったり体調が優れなかったりして、片付けを後回しにしているうちに、散らかってしまった可能性もあります。

このため、実家を片付けたい子ども側が親の気持ちに寄り添い、思いを伝えることから始めましょう。実家の片付けをする前に親に伝えることは、次の2点です。

  1. 親の事を心配しているから健康・安全に暮らせる家にしたい
  2. 勝手に物を捨てないから一緒に片付けたい

物に溢れた家に住んでいると、転倒や災害時のケガといったリスクがあり、害虫なども発生して衛生的ではありません。汚い家に住み続けるデメリットを感情的にならずに伝えると、親も片付けに前向きになるでしょう。

また、子供がゴミだと思っている物でも、親にとっては大切な物という可能性があります。このため、勝手に物を捨てない事を約束すると、親側も安心して片付けに臨めるでしょう。

美沙子さん
「実家にあるものは親の持ち物… そうですよね、分かっているつもりだったんですけど、親の気持ちを考えず、強く言い過ぎていた気がします。ちょっと言い方を改めようと思います」

美沙子さんも次に実家に行く時は、親の事を心配している事をしっかり伝えるとおっしゃっていました。

親もその気になる実家を片付けるときのコツ

部屋を片付ける時はいくつかのコツがあります。とくに実家を片付ける際は、次の3つのコツを頭に入れながら片付けていきましょう。

  1. 狭いエリアから片付ける
  2. 床や廊下など足元から片付ける
  3. 処分するかどうか迷う物を一時保管するスペースを設ける

片付けをする際は、玄関やトイレ、お風呂場などといった、狭いスペースから始めるのがおすすめです。片付けたときの成果が目に見えてわかるので、より片付けたい気持ちが増すはずです。

また、実家の片付けでは、実際に邪魔になって困る場所から始めるのがポイント。押入れや物置よりも床や廊下から片付けると、歩きやすくなり、親が生活しやすくなるでしょう。

実家の片付けでは、勝手に物を捨てないことを約束しているので、明らかなゴミがあった場合には、親に確認してから処分します。

明らかなゴミとは、賞味期限切れの食品や破れたり汚れたりしている衣類などです。処分するかどうか迷う物があれば、一時保管するためのダンボール箱や袋を作っておき、そこに入れていくようにしましょう。

盲点だった!実家に眠っていた子供時代の宝物

その後、美沙子さんは再度話に来てくれました。すると「もうびっくりすることがあったんです!」と、興奮気味に話してくれました。

美沙子さんの話によると、実家の玄関を掃除していると、靴箱から美沙子さんが就職活動の時に履いていたパンプスが出てきたというのです。

美沙子さん
「私が実家を離れてもう20年近いんですけど、実は私の物も結構実家に残っていたんですよ!中学や高校の頃に着ていたジャージとか、就活で使っていたリクルートスーツとか。もう着ないものは資源ごみに出すように、全部まとめてきました」

照れ笑いを浮かべながら、美沙子さんは続けました。

美沙子さん
「小学生の頃集めていたかわいい形の消しゴムや、友達とやっていた交換日記も出てきたんですよ。一部は持ち帰って、それ以外は処分しました。ちょっと黒歴史みたいな感じで、自分の子どもには見せられないものだったんですけど… 出てきた私の宝物を見ながら、母と久しぶりに思い出話をできたのがよかったです」

美沙子さんが話してくれたように、実家に子供時代の物が残っているという話はよく耳にします。子供の持ち物だからと、親はずっと捨てずに残していることが多いものです。

実家を片付けるときは、親に「片付けて」と言う前に、自分の持ち物がないかを確認して処分や持ち帰るなどするとよいでしょう。

実家の片付けが大変な時は専門業者も検討しよう

親が片付けに意欲的だったとしても、実家を片付けるのは大変です。

とくに家具や家電を処分する場合には、自治体の粗大ごみ回収に出すにしても、自分たちで搬出して回収場所まで持っていく必要があります。また、介護が必要になって実家をリフォームすることになった時などは、悠長に片付けをしている時間がありません。

迅速に片付けをしたい時は、専門の業者に依頼するのがおすすめです。実家の片付けの際は、生前整理や遺品整理、不用品回収などを行っている業者に依頼しましょう。

依頼する際は必ず複数の業者に問い合わせをして、相見積もりをするのがポイントです。なかには悪質な業者もいるため、信頼できる業者を選びたいですね。

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