生前整理をしないと家族が困る…経験者が語る「遺品整理の大変さ」とは?

体験談

身内が亡くなると、数日の間、残された家族は怒涛のように葬儀の準備や手続きを行わなければなりません。葬儀がすべて終わり、少しほっとしたときに、考えなければならないのが「遺品整理」です。

もし身内が賃貸住宅や介護施設などで暮らしていた場合には、迅速に遺品整理を済ませて退去をしなければなりません。

「私の実家は持ち家だから」と、安心している方がいるかもしれませんが、実家が空き家になる場合は、いずれ撤去したり貸したりなどを考える必要があります。遅かれ早かれ、遺品整理は必要となると考えておいた方がよいでしょう。

「親の持ち物だし、こつこつ片付ければ大丈夫」と、思う方も多いのですが、実際に遺品整理を経験した方は「とにかく大変だった」と口を揃えます。なかには、「自分は子どもに迷惑をかけないように生前整理をする!」と、決心する方も多いようです。

今回は、両親が健在で遺品整理について考えたこともなかった雅子さんから伺った話をご紹介します。

遺品整理経験者が生前整理をすすめる理由

雅子さんが、伯母の一周忌法要に出席したときの話です。

雅子さんは、一周忌法要が終わり、伯母の長男でいとこの茂さんと話したときのことを忘れられないと語ります。

茂さんと雅子さんは、同い年のいとこ同士。一時期近所に住んでいたこともあり、子どもの頃はよく遊んだ仲でした。伯母は裁縫が得意なしっかり者で、雅子さんも小学生のときに家庭科の課題を手伝ってもらったことがあったそうです。

雅子さん
「伯母さん、大往生だったね。1年経って少し落ち着いた?」

雅子さんがそう聞くと、茂さんは苦笑したそうです。

茂さん
「おふくろ、最後は認知症で、家の中がめちゃくちゃだったんだよ。何がどこにあるのか探すのが大変でさ。1年経ったけど、まだ片付けは終わらなくて」

伯母は几帳面な性格だったので、「家の中がめちゃくちゃ」という茂さんの言葉に雅子さんはとても驚きました。しかも、亡くなってから1年経ったのに、まだ片付けが終わらないなんて。

茂さんは、法要が終わってほっとしたのか、いろいろなことを話してくれました。

茂さん
「長いこと一人暮らしで、その前だって親父と二人暮らしだったのに、押入れには来客用の布団が5組あるんだよ。長年押入れに入れっぱなしだから、もうカビも生えてて。」
茂さん
「ほかにも、昔結婚式の引き出物でもらったような食器やグラスのセット、一度も使っていないタオルのセットとかもたくさんあって。そういうものの中に、通帳とか勝手口の鍵とかが入っているから、おいそれとは捨てられないんだよ」

茂さんの遺品整理の苦労話は止まりません。

茂さん
「ゴミみたいに捨てるものがいっぱいなんだけど、おふくろが作ったパッチワークとか、写真のアルバムとか、うちの子どもが小さいときに書いた『おじいちゃん・おばあちゃんへ』っていう手紙とかが入った缶とか、いろいろ出てくるんだよ。親父が愛用していた時計とかも。そういうのって、なかなか捨てられなくてね」

雅子さんによると、茂さんは少し涙ぐんでいるようにも見えたそうです。

茂さん
「俺ももうすぐ70だし、俺のきょうだいもみんな手術したり入院したりって年だから、なかなか片付けが終わらなくて。実家が片付いたら、今度は自分の生前整理をやろうと思ってちょっとずつ片付けているところなんだ」

茂さんはこう漏らしふざけた感じで笑いながら、雅子さんに言ったそうです。

茂さん
「まーちゃんも、生前整理したほうがいいよ!俺なんか、この間家を見たら、デッキもないのに大量のカセットテープが見つかったから、全部捨てたよ」

「遺品整理に期限はない」は本当?

雅子さんは帰宅してから、自分の実家や自分自身の身の回りのことが気になって、遺品整理について調べてみました。すると、茂さんは一周忌法要のときも遺品整理が続いていると言っていましたが、実は期限があることに気づいたそうです。

身内が亡くなると、残された家族は故人の財産を相続します。一般的には、配偶者や子、親などが相続人となり、故人の財産を分けて継承しますが、相続を確定するのに期限があります。相続税の申告は、故人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に行わなければならないからです。(※1)

故人が愛用していた日用品の片付けという意味では期限がないかもしれませんが、少なくとも金銭的な価値が高い物は早く見つけ、10ヶ月以内に申告しなければなりません。

伯母のように認知症になって、何がどこにあるかわからない状態だと、思わぬところから重要な財産が出てくる可能性もあります。

10ヶ月を過ぎても修正申告は可能ですが、再度遺産分割をやり直す必要が出てくるなど、手続きは大変です。追加で財産が見つかったのに申告をしなかった場合、税務調査などで申告漏れを指摘されたら、追徴課税を支払わなければなりません。

遺品整理は精神的にも肉体的にも大変な作業

親の遺品には思い出がたくさん詰まっています。茂さんが遺品整理の話をしながら涙ぐんだように、残された家族にとって遺品整理は精神的にも肉体的にもつらい作業です。

親が長生きなのは嬉しいことですが、親と同じだけ子供も年を取ります。

雅子さんも、時々足腰が痛む年頃です。実家の物置や押入れに荷物がたくさん詰まっていたのを思い出し、不安な気持ちになったそうです。

雅子さんには妹がいますが、夫の転勤に帯同して実家から離れた場所で暮らしています。協力し合えるきょうだいがいたとしても、みんな実家から離れたところに世帯を構えていたら、遺品整理のために何度も集まるのは大変です。交通費や滞在費を考えると、金銭的な負担も大きいでしょう。

親が生前整理をしていないと残された家族はどうなる?

雅子さんは調べるうちに、自分に万が一のことがあったときのことがより不安になったそうです。

雅子さん
「実家もモノが多いけど、私もよく考えてみたらクローゼットに洋服やアクセサリーをたくさん持っていて。30年前に子どもの卒業式用に買ったアンサンブルスーツとか、たぶんまだ持っているわ。奮発して買ったものだけど、私にもしものことがあったとき、子どもが処分するのは大変よね」

雅子さんには息子と娘がいますが、どちらも結婚して子どももいます。仕事をしながら家事や育児に奮闘しているのを知っているので、子どもたちに迷惑をかけられないと感じたそうです。

雅子さん
「モノが多くて大変だけど、自分の持ち物だから自分で処分するしかないわよね。茂ちゃんが言ってた生前整理を、少しずつやっていこうと思ってるわ」

また、雅子さんは、自分に万が一のことがあったときに問題になりそうなものに気づいたと言います。

雅子さん
「最近は銀行口座も株も全部スマホで取引していて。スマホは指紋で開くようになっているから、私にもしものことがあったときに、家族は何もできないと思うの」

スマホのなかには指紋認証や顔認証などでロックされていて、本人でなければ開けない仕組みになっているものもあります。

金融資産や友人関係、写真や動画なども、スマホに入っていることが多いでしょう。万が一のときに残された家族に知らせなければならない情報もありますが、家族には知られたくない秘密のデータが残されていることもあります。

生前整理の第一歩として財産目録を作成しよう

親が健在だったり自分の生前整理をしたいと考えていたりするとき、まずは財産目録を作成するのがおすすめです。所有している財産を洗い出して、その価値を一覧にします。

高齢の親は「お金の話ばかりして」や「縁起が悪いことを言うな」と、不機嫌になるかもしれません。しかし、親が元気なうちに、万が一のときに困らないように聞いておくとよいでしょう。

財産目録に書いておきたいのは、次のような項目です。

  • 現金
  • 預貯金口座ごとの残高
  • 不動産
  • 有価証券
  • 生命保険
  • 所有しているクレジットカード
  • 借入金
  • 宝石や骨董品など価値のある物

財産目録と一緒に通帳や重要書類などを金庫に入れておけば、万が一のときも相続関連の手続きが楽になるでしょう。金庫に入らないものは、目録やメモに保管場所を書いて残しておくのがおすすめです。

財産目録を作るにあたって、ほとんど使用していない預貯金口座やクレジットカードが出てくることも多いでしょう。場合によっては、年会費だけずっと払い続けているクレジットカードがあるかもしれません。使っていない口座やクレジットカードは、生前整理の一環として解約するのがおすすめです。

口座やカードが少なければ少ないほど、管理がしやすくなります。パスワードや暗証番号もわかるようにしておきましょう。

インターネット上のサービスはIDやパスワードをメモしよう

ネットバンキングや通販、サブスクリプションサービスなど、インターネット上のさまざまなサービスを利用している方は、万が一のときに家族がわかるようにIDやパスワードのメモを残しておくとよいでしょう。

スマホを生体認証で開いている場合には、万が一のときに家族が開けるようにパスワード設定をすることをおすすめします。

パスワードの設定方法は、機種や携帯会社によって異なります。こちらを参考にして、わからなければご自分が契約している携帯会社に確認してみましょう。

遺品整理や生前整理は業者に依頼すれば解決できる

遺品整理や生前整理では、必要なものと不要なものを分けて、不要なものを処分していきます。一般的に、残しておくものよりも処分するものの方が多くなるので、たくさんのものを捨てることになるはずです。

古い家具や家電・書籍・洋服・小物類を処分するとき、重いものを搬出したりゴミの分別が必要になったりと、捨てる作業だけでもかなりの負担になります。

遺品整理や生前整理に行き詰まったら、すべて自分でやろうとせずに専門の業者に依頼するのがおすすめです。遺品整理業者は大切な遺品を扱うプロで、持ち主の気持ちを尊重しながら丁寧に片付けをしてくれます。

遺品整理の経験が多いスタッフは、モノであふれている部屋の中から重要書類を探し出すのも得意です。また、モノの分別や清掃、買取なども行う業者もあるため、作業の手間が省けます。

生前整理が大切とわかっていても、生きているうちにすべてのモノを片付けるわけにはいきません。

もし自分に万が一のことがあったときに、残された家族に負担をかけたくないという場合には、専門のサービスを検討してみてはいかがでしょうか?

タイトルとURLをコピーしました