エンディングノートは終活の第一歩!でも実際に活用している人は少ないって本当?

体験談

「終活」という言葉が浸透した昨今、老後の生活やご自身の葬儀・お墓について考える機会を積極的に持っている方も増えています。しかし、実際にエンディングノートを作成している人は、想像よりも少ないのが現状です。

2020年に終活アドバイザー協会が実施した調査によると、「終活」という言葉を知っている人は全体の96.4%でした。20代の若者から高齢世代まで、多くの方が終活という言葉を認知しています。

終活の第一歩として欠かせない「エンディングノート」についても、全体の80.3%の方が知っていると回答しました。しかし、実際にエンディングノートを持っているのは全体の12.2%のみ。60歳以上でも20.5%に留まりました。

「終活は何かしなければならない」と思っていても、実際にエンディングノートを書くのはハードルが高いのかもしれません。「まだ元気だから必要ない」や「あまり死を意識したくない」など、さまざまな感情があることは理解できます。しかし、エンディングノートは元気なうちに早めに書き始めるのがおすすめです。

今回は「親にちゃんとエンディングノートを書いてもらえばよかった…」と、後悔している安田さん(仮名)の話をご紹介します。

一人暮らしの父親の急逝。手探り状態で手続きを始めなければいけなくなった理由とは?

安田さんは2ヵ月前にお父様を亡くされましたが、ずっと離れて一人暮らしをしていたお父様のことがよくわからずに、困ったそうです。

安田さんのご両親はいわゆる熟年離婚をされて、別々に暮らしていました。

安田さん
「親父は昔から仕事を理由に家事も育児も母に押し付けてきた人でした。まあ、当時はそういう時代だったんでしょうね。でも、母は積もり積もった不満があったんだと思います。父が定年退職するとほぼ同時に、母は出ていきました。私はすでに結婚して世帯を持っていたので、青天の霹靂という感じだったんですけどね」

安田さんのお父様はそのまま実家に残り、お母様は隣の市にあるUR住宅に入居されたそうです。

安田さん
「私は父とも母とも連絡を取っていました。でも、圧倒的に母と過ごした時間のほうが長いものですから。私に子どもが生まれても、やっぱり母に会うことのほうが多かったですね。親父はあまり喋らないし、子どもの扱いも上手じゃなかったですからね」

なかなか会わなくなったとはいえ、安田さんはお父様のことを気に掛けていました。

安田さん
「しっかり者の母がいなくなったので、親父の食生活とか近所付き合いとかは気になっていました。まあ、私が『一人で大丈夫?』と聞いても『ああ、まあなんとかなる』というような返事しかなかったんですけど」

安田さんは妻の妊娠をきっかけに、両親にエンディングノートを書くように勧めたことがあるそうです。

安田さん
「うちの妻は切迫早産というやつで、出産前に長期入院が必要になったんですよ。妻が家計用の銀行口座も管理していたので、私はキャッシュカードの暗証番号すらわからなくて。あと妻の入っている保険の手続きにも困ったので、両親に『こういうの書いとくといいみたいだよ』とエンディングノートを渡しました」

お母様のほうは「へえ!エンディングノート、聞いたことあるわよ。暇になったし書いてみるわ」と、興味を持ったそうですが、お父様のほうは「ああ」と言ったきり、本棚にしまいっぱなしになっていたようです。

安田さん
「父は交通事故で急死だったんです。だから本人もまさかという感じだと思います。父が亡くなった後実家で私が渡したエンディングノートが見つかったんですけど、何も書かれていませんでした」

安田さんはまっさらなエンディングノートを見て、思わずため息をついてしまったそうです。

安田さん
「父の交友関係がまったくわからなかったんですよ。お葬式に誰を呼んだらよいのかわからくて。一応別れたとはいえ、母が手伝って実家でやり取りしていた年賀状やら住所録やらを確認したんですけど、年賀状を見ても関係性や親しさの濃淡はわからないんですよね。それも両親が離婚したあとは、そういったやり取りもほとんどしなくなったみたいで」

参列者がわからないまま家族葬を選択した安田さんでしたが、そのことで伯父さん一家とトラブルになったそうです。

安田さん
「親父の故郷では、まだ親族や近所の人が大勢集まってお葬式をするのが普通で。参列者が10人に満たない親父のお葬式にやってきた伯父さんがめちゃくちゃ怒ってしまいました。『なんだ、こんな小さい式。恥ずかしい』って」

安田さんはお父様がまだ60代だったので、終活をしてほしいと積極的に話したことはなかったそうです。

安田さん
「いい年になって独り身になった親父のことをかわいそうだという気もちょっとあって。だから、そのうえ『終活してくれ』とは言いづらかったんですよね。でも、親父のこと、もっとちゃんと知っておきたかったなと、今は後悔しています」

安田さんはこれから先の手続きも、すべて手探り状態だから大変だと言います。

安田さん
「お墓とか相続とかも、今後やっていかないといけないんですけどね。正直に言うと、よくわからないので、全部投げ出してしまいたいのが本音です」

もしもの為にエンディングノートは早めに書くのが正解

安田さんのお話を伺うと、エンディングノートはなるべく早いうちに、できれば今すぐにでも書いたほうがよいとわかります。人の死は必ずいつかやってくるものですが、それがいつなのかは誰にもわかりません。安田さんのお父様のように、突然事故に遭うこともあるでしょう。

また、安田さんの奥様は、妊娠中に長期入院をされています。エンディングノートには預貯金口座や加入している保険の情報を書く欄もあるので、入院や事故、または財布やスマートフォンの紛失など、若いうちから起こりうるトラブルへの対策としても役立つでしょう。

「まだ若いから、エンディングノートを書くには早い」という方も、エンディングノートを書いておくとよいですね。

エンディングノートを書くポイントと注意点

世の中にはさまざまなエンディングノートがあります。書店で販売されているもの、市町村役場や保健センターで配布されているもの、葬儀社や霊園などでもらえるものなどがあるので、もしかするとすでに持っているという方もいるかもしれません。

どのエンディングノートでも、開いてみると書くべき項目が記載されているので、指示に従って書き込むだけでご自身の情報が詰まったエンディングノートになるはずです。

エンディングノートは簡単に書けるようになっていますが、それでも書き出せないという方も多いようです。そこで、エンディングノートを上手に書くポイントと注意点を3つご紹介します。

エンディングノートは書けるところから書く

エンディングノートには、何も見なくても書ける項目と調べてからでないと書けない項目があります。たとえば、自分のプロフィールについて書く項目は、名前や住所、本籍地などを埋めるだけなので、簡単に書けるはずです。一方、自分が保有している財産の状況や関係者の連絡先などは、調べてみないとすぐにはわからないでしょう。

真面目にエンディングノート作成に取り組もうと思っている人ほど、すべての欄を埋めなければならないと感じて、書き出しにくくなってしまうものです。
しかし、エンディングノートは書き始めることが大切なので、書けるところから書いていきましょう。また、もし書いた情報が間違っていた場合は、何度でも修正できます。気軽に書いていきましょう。

相談しながらエンディングノートを書く

エンディングノートは自分の希望や伝えたいことを自由に書き残せるものです。遺言書と混同するかもしれませんが、エンディングノートには法的拘束力がありません。このため、ほかの人に書く内容を相談したり見せたりしても大丈夫です。

終活を始めると、自分一人では解決できない事柄にぶつかることがあります。たとえば、介護のこと。最期まで自宅にいたいという思いから在宅介護を希望していても、家族が協力してくれなければ実現できないでしょう。反対に、介護施設に入居したいと思っていても、希望通りの施設が見つからなければ難しくなります。

このように、自分一人では決められないことに関しては、家族や担当ケアマネージャー、地域包括支援センターのスタッフなど、さまざまな人に相談しながら書き込みましょう。

エンディングノートを書き進めるうちに、自分の将来の夢や希望を叶えるために考えなければならない事柄が明確になります。このため、人に相談しながらエンディングノートを書いていくことで、どんどん終活が進むはずです。

エンディングノートを誰に託すか想定して書く

エンディングノートはあなたに万が一のことがあったときに、誰かに託すメッセージです。誰に託すのかで、伝えたい内容は変わるかもしれません。このため、エンディングノートは、具体的に誰に託すのかを想定して書くことが大切です。

たとえば、配偶者がいる人であれば、夫や妻が困らないように伝えたいことがあるかもしれません。子どもに残したいメッセージをお持ちの方も多いでしょう。おひとり様の場合も、具体的に誰に読んでもらいたいかを考えて、エンディングノートを書くことをおすすめします。ご自分のきょうだいや甥・姪、もしくは社会福祉協議会の方など、さまざまな人が対象になるかもしれません。

エンディングノートを託す相手、つまりご自身に万が一のことがあったときにお世話や手続きをしてくれる人は誰なのかを考えることも、終活の第一歩といえるでしょう。

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